名古屋コ〜チン氏『ラブ・ナヴィゲーション Side:E』序章


出会いとはいつも突然。そんな言葉は私にだって例外ではないのだ。


善丹知学院に入学してからすぐ。
当時四年生でありながら生徒会長を務めるという器量とそれに違わぬ人気を持つ観沢美月先輩のお部屋番に何の前触れもなく任命された。本当に何の前触れも無く。
そこからさらに一ヶ月ほど。
一応仕事もまあそれなりにこなせていて、そして今日もお仕事と気を締めたときだ。観沢先輩の部屋の隣、当時の善丹知生徒会四天王と呼ばれていたうちの一人、湖橋蓮先輩の部屋の前に一人の女の子が立っていた。
一目見てまず、「なんでこんなことやっているのだろう」とも言いたげな、だがそれはそれで、みたいな。不満と不安と期待がそれぞれ微妙に混ざり合った表情をしていた。
髪を頭の両脇で結わく・・・いわゆるツインテールの女の子はただ一度見ただけで完全に胸に焼きついたのだ。
それが一度目の、しかも向こうはこちらを見ていないし、会話なぞ交わしていないので、完全に一方的な出会い。声をかけることすら出来なかったのは、彼女が湖橋先輩のお部屋番でさくっと部屋に入っていったからだ。


さらにさらに二日後。
「生徒会のお手伝い、お願いできないかしら?」
観沢先輩からの申し立てで生徒会入りである。
代々、生徒会のお部屋番に、しかも会長のお部屋番になった時点で将来が決まったようなもので、生徒会そのものは投票制でも明らかに知名度が上がってしまうから、自然と押し上げられていく。仮入会とはいえ、九割方決定事項なのだ。
それが運が良かったのかどうなのか。
お手伝い初日、生徒会室には彼女がいるのであった。やはり、というか結局のところ、彼女も生徒会入りしたようなものだったのだ。


彼女の名前は古林凛。
時間も今は就寝時間、私は彼女の安らか且つ少女らしい寝息をそばで聴こうと、忍び足でベッドにスニーキング作戦を遂行中なのである。


あ、ちなみに私の名前は円藤菜緒。今現在ノア女学院三年生で、凛と同学年で、ルームメイトなのである。

@序文